「ん?」
「え?」
不思議そうに見返すレイにミオもまた不思議そうに見つめ返す。
まさかレイが自分と好きと言ったのだろうか。そんな、あり得ない。
「もしかして……伝わってないとか……ないよな?」
しかし目をパチパチさせるばかりのミオを訝しげに漆黒の瞳が覗いてくる。しかし困惑と混乱でミオはどう返したらいいかも分からない。
「一体何を……? 何が……?」
「………………そっか。わーそっからかー」
混乱してもはや涙目になってしまっているミオの顔を穴が空く程たっぷり見つめ、それからレイは視線を宙へと向ける。そして無言で頭を両手で抱えた後、レイは一つ頷き棒読みで声を上げた。
「えっ本当に、何を、です?」
ミオの困惑しきった様子にレイは地獄の底を這うような重々しい溜め息を吐く。ますますミオは混乱してしまう。
そしてレイは徐にミオの両肩を掴むとこう言った。
「オレはミオが好きだ。勇者の嫁とかそう言うんじゃなく、そう言うの関係なしでオレはミオのことが好きだ」
はっきりとしたストレートな告白である。それは美しく詩的な愛の告白とは程遠い、飾り気のない純粋な好意を伝える告白だ。ロマンティックな雰囲気もない、回りくどい比喩も隠喩もない何の面白みのない告白である。
だが、だからこそレイの告白はミオの心に真っ直ぐに伝わった。伝わってしまった。
(ほ……本当にこの方は私のことが、す、好き、なんだ)
みるみる内に自分の顔の温度が高まっていくのを感じる。
自分が異性に好意を持たれるなんて想像もしていなかった。
顔どころか全身が熱い。
告白と同じくらい真っ直ぐな瞳からミオはまたもや目を逸らしてしまう。
「あっあの……その私、そう言う、恋愛と言うのはよく分からなくて……」
やっとの思いでそれだけを振り絞るように小さく口にする。
「うん、分かる。そんな感じだよね」
しかしミオが必死に紡いだ言葉にレイは呆れたようでも気を悪くした風でもなく頷いて先を促した。
「けれど……その」
「うん」
「その、レイ様のことは……世界で一番大切な方……だと思っています」
それはミオの紛れもない本心だった。恋や愛と言うのはミオにはよく分からない。しかしレイがいてくれたからこそ家に居場所がなかった自分にも居場所が出来たし、新しい自分の可能性と言うものに気付けたのである。
それだけではない。思い返し